【ブロックチェーンの相互運用性】クロスチェーン操作の未来を開く(第17回)

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はじめに

ブロックチェーン技術は、暗号通貨の枠を超えて急速に進化し、分散型金融(DeFi)、分散型アプリケーション(dApps)、さらにはサプライチェーンや医療など、さまざまな分野に広がっています。しかし、多くのブロックチェーンネットワークが個別に動作しているため 、これらのシステム間でシームレスなデータのやり取りができないという課題が浮上しています。この問題は「相互運用性の課題」として知られ、トークンの転送やデータ交換、ブロックチェーン間での取引の効率を制限しています。

相互運用性は、ブロックチェーン技術の潜在能力を最大限に引き出すための重要な鍵です。 この相互運用性の概念は、ブロックチェーンがさらに広がるために解決すべき課題の1つです。

ブロックチェーンの相互運用性の進化


相互運用性とは、もともとは異なるシステムやコンポーネントが、プラットフォームの違いを超えてデータを交換し、効率的に利用できる能力を指します。この概念はもともとソフトウェア開発から生まれたものですが、ビットコイン、イーサリアム、ポルカドットなど、異なるプロトコルを持つブロックチェーンの進展に伴い、ブロックチェーン技術にも適用されるようになりました。


この相互運用性を実現するためには、大きく2つのアプローチがあります。1つ目は「ブリッジング」で、異なるブロックチェーン間でデータを変換・翻訳する手法です。2つ目は「標準化」で、共通のプロトコルを使用して通信を行う方法です。これらのアプローチを使用することで、現在のブロックチェーンプロジェクトは相互運用性の課題に取り組んでいます。

ブロックチェーンの包括的運用性の理解

ブロックチェーンの包括的運用性とは、複数のブロックチェーンがプラットフォームを超えてデータを通信し、取引を実行できる能力を指します。これを実現するためには、主に2つの方法があります。

標準化
ブロックチェーン間の互換性を確保するための統一プロトコルを確立する方法です。これは拡張性が高い一方で、柔軟性には欠ける場合があります。

ブリッジング
共有プロトコルを必要とせず、データをブロックチェーン間で翻訳する方法です。柔軟性は高いものの、拡張性には限界があります。


クロスチェーンデータ転送のためのルールが定義されることで、異なるブロックチェーンネットワーク間でのシームレスなデータフローが可能となり、エコシステムのさらなる拡大と多様化を実現します。

クロスチェーン相互運用性の概念

クロスチェーントランザクションは、ブロックチェーン間で資産(例えばトークン)が自由に移動できるようにするために非常に重要です。しかし、これにはトランザクションの有効性やセキュリティを確保するための複雑な技術が必要です。

相互運用性の実現には、特に以下のセキュリティの課題に対処する必要があります。

51%攻撃:ブロックチェーンの過半数のノードが悪意を持って操作されるリスク。

オラクル問題:外部データの信頼性を確保する課題。

ファイナリティ:トランザクションが確定され、不可逆になるまでのプロセスの安全性。


これらの課題を克服するためには、厳格なセキュリティプロトコルとルールが必要です。

実例 : Polygon PoSとその応用

Polygon PoSシステムは、イーサリアムのレイヤー2スケーリングソリューションの1つであり、相互運用性を実現する優れた例です。このシステムでは、Polygonとイーサリアムの間にブリッジを構築することで、トークンが2つのネットワーク間を自由に移動できるように なります。

◾️Polygonブリッジ

https://portal.polygon.technology/bridge

この過程では、「ロック&ミント」や「ラップトークン」といったメカニズムが利用されま す。これは、イーサリアム上で資産をロックし、その資産をPolygon上で表現する仕組みです。しかし、この仕組みには課題もあります。例えば、トランザクションの完了に時間がかかること(Polygon PoSでは約22分)や、手数料が高いことが挙げられます。これらの課題に対しては、さらなる技術革新が求められています。

◾️Polygonとは?

Web3, Aggregated.
Enabling an infinitely scalable web of sovereign blockchains that feels like a single chain. Powered by ZK tech.
Polygon Knowledge Layer

スケーラビリティ問題への対応 : 相互運用性の解決策

ブロックチェーン技術における最大の課題の1つは、スケーラビリティ(拡張性)です。ネットワークが拡大するにつれて、セキュリティや分散性を損なわずにトランザクション処理能力を維持することが難しくなっています。シャーディングやロールアップ、サイドチェーンといった技術は、異なるブロックチェーンを並行して処理することで、スケーラビリティ問題を解決しようとしています。


例えば、CosmosやPolkadotといったアプリケーション専用のブロックチェーンは、複数のブロックチェーンを同時に運用し、システム全体の効率を向上させることを目指しています。

ブロックチェーン相互運用性の未来

今後、ブロックチェーンの相互運用性はさらに進化し、より複雑なシステムが登場するでしょう。AIを駆使したブリッジアグリゲーターの研究が進められており、これにより最も効率的でコストのかからないクロスチェーントランザクションを自動で見つけることが可能になります。

DeFiやdAppsの人気が高まる中で、シームレスな相互運用性の重要性は増すばかりです。スループットの向上、待機時間の短縮、セキュリティの強化といった研究が進み、真に分散化された「ブロックチェーンインターネット」の実現が目指されています。

結論

相互運用性は、ブロックチェーン技術の未来を形作る重要な要素です。新たなフレームワークの導入や技術的進歩により、ブロックチェーンはさらなる飛躍を遂げるでしょう。しかし 、セキュリティやパフォーマンス、標準化に関しては依然として多くの課題が残っています 。これらの障害を乗り越えることで、真の相互運用性を備えたブロックチェーンの世界が実現し、様々な産業や政府、個人の協力をさらに深めることが期待されています。


◾️参考文献

SoK: ブロックチェーン相互運用性のセキュリティとプライバシー [拡張版]

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GitHub - RafaelAPB/SoKSPBlockchainInterop
Contribute to RafaelAPB/SoKSPBlockchainInterop development by creating an account on GitHub.

ブロックチェーンの相互運用性のための標準フレームワークに向けて: ポジションペーパー、v5、2024

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ブロックチェーンの相互運用性、2023年の歴史

https://d197for5662m48.cloudfront.net/documents/publicationstatus/175219/preprint_pdf/a41f2ebfdb5f70f15ccd8383e1e2e337.pdf

ブロックチェーンの相互運用性に関する調査: 過去・現在・未来の動向、2021年

https://arxiv.org/pdf/2005.14282

分散型台帳技術の相互運用性ソリューションは必要か?

Do You Need a Distributed Ledger Technology Interoperability Solution? | Distributed Ledger Technologies: Research and Practice
Entrepreneurs, enterprises, and governments are using distributed ledger technology (DLT) as a component of complex info...

ハルモニア ゼロ知識証明を用いたクロスチェーン・アプリケーションの安全性, v2, 2024

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