【ChatGPT・Claude・Gemini】プロンプトエンジニアリング(第二回)

ChatGPT

概要

AI技術の進化により、私たちはChatGPTやClaude、Geminiといった高度な言語理解能力を持つAIチャットボットを無料で利用できるようになりました。これらのAIは、私たちの質問に対して驚くほど的確な回答を提供してくれます。しかし、AIとの対話にもコツが必要です。質問の仕方を工夫することで、AIからより深い洞察や有益な情報を引き出すことができるのです。

この「プロンプトエンジニアリング」と呼ばれる技術は、AIを効果的に活用するための新たなスキルとして注目されています。世界中の研究者たちが日々この分野で研究を進めており、その成果が論文として続々と発表されています。

今回のブログでは前回に引き続き、OpenAIの『ChatGPT』やAnthropicの『Claude』、Googleの『Gemini』などのAIチャットツールを使って、より優れた文章を生成するためのプロンプトエンジニアリングのテクニックや、最新の研究成果について紹介します。AIチャットボットを賢く使いこなすためのヒントが満載ですので、ぜひご覧ください。

自然言語以外でLLMを強化する方法

はじめに、自然言語以外でLLMを強化する方法というプロンプト手法を試してみようと思います。まずは論文を要約して、論文の内容を簡単にまとめてみました。

Beyond Natural Language: LLMs Leveraging Alternative Formats for Enhanced Reasoning and Communication

Beyond Natural Language: LLMs Leveraging Alternative Formats for Enhanced Reasoning and Communication
Natural language (NL) has long been the predominant format for human cognition and communication, and by extension, has ...

論文の概要

この論文では、大規模言語モデル(LLM)を自然言語以外の形式を活用して強化する新しい手法について説明しています。従来のLLMは主に自然言語を使用して推論や通信を行っていましたが、この研究ではコード、論理式、構造化データ(JSON、マークダウンテーブルなど)などの非自然言語形式が、LLMの推論効率とマルチエージェント間の通信効率を向上させる可能性があることを示しています。

具体的には、LLMが推論や通信を開始する前に最適な形式を自律的に選択できるようにする「AutoForm」と呼ばれる手法を提案しています。これにより、単一のLLM推論では3.3%から5.7%の効率向上が見られ、マルチエージェント通信では最大72.7%のトークン使用削減が達成されました。

この研究は、LLMがタスクに応じて最適な形式を選択し、その形式が他のLLMにも転送可能であることを示しています。結果として、LLMの推論能力と通信効率を大幅に向上させる可能性が示されました。

この発見は、特に複雑な問題解決や正確なコミュニケーションが求められる場面で、大きな可能性を秘めています。

AutoFormとは?

AutoFormは、LLMが与えられたタスクに対して最も適切な形式を動的に選択する方法です。「AutoForm」という言葉を知っておくことがこの論文を活かしたプロンプトの作り方でもあるので是非覚えてみてください。

非自然言語形式を用いることで自然言語に頼りすぎず、非自然言語形式で的確なアプローチを行い、迅速に問題解決をはかることができます。まずは非自然言語形式にどのような方法があるのかを見てみましょう。

  • コード
  • シュードコード
  • JSON
  • マークダウンテーブル
  • 論理演算子
  • 数式
  • 箇条書きリスト
  • フローチャート

AutoFormの仕組み

タスク分析

LLMはまずタスクの性質を分析します。例えば、タスクが数学的な操作やデータ操作を含む場合、モデルは自然言語よりもコードの方が効率的だと判断することがあります。

形式選択

この分析に基づいて、モデルは最も適切な形式を自律的に選択します。この選択は事前にプログラムされているわけではなく、LLMがリアルタイムで最も効率的で正確な結果を得るための形式を決定します。

実行とコミュニケーション

形式が選択されると、LLMはその形式を使用してタスクを実行したり、他のモデルとコミュニケーションを取ったりします。例えば、データ構造を自然言語で説明する代わりに、モデルは直接JSONを使用して表現するかもしれません。

AutoFormの利点

効率の向上

タスクに最も適した形式を選ぶことで、LLMは情報をより迅速かつ正確に処理できます。この方法により、推論効率が3.3%から5.7%向上することが研究によって示されています。

トークン使用量の削減

複数エージェント間のコミュニケーションでは、冗長な自然言語の代わりにJSONのような構造化形式を使用することで、トークンの必要量を最大72.7%削減でき、より効率的なやり取りが可能になります。

モデル間の一般化

AutoFormはLLMがこれらの形式の使用を異なるモデル間で一般化できるようにし、選択された形式が他のLLMでも効果的に転用され、相互運用性が向上します。つまり、コードや論理演算子などはAIチャットボットの種類によらず、どのAIチャットボットでも転用できる方法であるということです。

具体例を用いて検証

ステップ1:問題
社員記録のデータセットがあり、次の条件を満たす社員を特定するタスクがあります。

年齢:30歳から50歳の間であること。

部門:「エンジニアリング」または「プロダクト」部門に所属していること。

経験年数:5年以上の経験があること。

職務満足度:7以上であること。
ステップ2:LLMによる問題の理解

この問題は特定の条件に基づいて構造化データをフィルタリングすることを含んでいます。このため、JSONのような構造化データ形式がこのタスクに適していると判断されます。

ステップ3:フォーマット選択と表現

LLMは、データセットを表現するためにJSONを選択します。これにより、条件を適用しやすくなります。データセットは以下のようにJSON形式で表されます。

[
    {
        "name": "Alice",
        "age": 35,
        "department": "Engineering",
        "years_of_experience": 10,
        "job_satisfaction": 8
    },
    {
        "name": "Bob",
        "age": 29,
        "department": "Product",
        "years_of_experience": 6,
        "job_satisfaction": 6
    },
    {
        "name": "Charlie",
        "age": 45,
        "department": "Engineering",
        "years_of_experience": 12,
        "job_satisfaction": 7
    },
    {
        "name": "Diana",
        "age": 32,
        "department": "HR",
        "years_of_experience": 8,
        "job_satisfaction": 9
    }
]
ステップ4:コードを使った条件の適用

次に、LLMはJSONデータを処理し、条件を適用するためにPythonコードを使用します。

# JSON形式のサンプルデータ
employees = [
    {"name": "Alice", "age": 35, "department": "Engineering", "years_of_experience": 10, "job_satisfaction": 8},
    {"name": "Bob", "age": 29, "department": "Product", "years_of_experience": 6, "job_satisfaction": 6},
    {"name": "Charlie", "age": 45, "department": "Engineering", "years_of_experience": 12, "job_satisfaction": 7},
    {"name": "Diana", "age": 32, "department": "HR", "years_of_experience": 8, "job_satisfaction": 9}
]

# 条件に基づくフィルタリング
filtered_employees = [
    emp for emp in employees
    if 30 <= emp["age"] <= 50 and
    emp["department"] in ["Engineering", "Product"] and
    emp["years_of_experience"] > 5 and
    emp["job_satisfaction"] >= 7
]

print(filtered_employees)
ステップ5:出力とコミュニケーション

条件を適用した後のフィルタリング結果は以下の通りです。

[
    {
        "name": "Alice",
        "age": 35,
        "department": "Engineering",
        "years_of_experience": 10,
        "job_satisfaction": 8
    },
    {
        "name": "Charlie",
        "age": 45,
        "department": "Engineering",
        "years_of_experience": 12,
        "job_satisfaction": 7
    }
]

この出力から、AliceとCharlieのみがすべての条件を満たしていることがわかります。

ステップ6:結果の要約

最後に、LLMは非自然言語形式で出力した結果を自然言語で要約します。

指定された条件に基づいて、すべての条件を満たす社員はエンジニアリング部門のAliceとCharlieです。
結論

今回の事例では、AutoForm手法を使用することで、LLMは構造化データを表現するためにJSONを選択し、フィルタリングにはPythonコードを選択しました。

この組み合わせにより、問題を効率的に解決し、結果を明確に伝えることができます。このアプローチは、AutoFormがより複雑なタスクにおいても推論プロセスとコミュニケーション効率を向上させる方法を示しています。

プロンプト入力の際に「AutoFormの手法を用いて」と指示する方が有効か?

指示に「AutoFormの手法を用いて」と含めることは、LLMが最適な形式を選択しやすくするための有効な方法です。しかし、タスクが明確であれば、省略しても問題はありません。どちらの方法も、状況に応じて使い分けると良いでしょう。

複雑なタスクの場合、「AutoForm」という言葉を知っているだけで、多くのプロンプトの記述を省略することができるので是非覚えておきましょう。

「AutoForm」という言葉を忘れてしまった場合は、AutoFormにどのようなものがあるのかを思い出してみてください。「自然言語以外のより構造化された簡潔なコミュニケーション形式」という言葉でも代用することができます。

  • コード
  • シュードコード
  • JSON
  • マークダウンテーブル
  • 論理演算子
  • 数式
  • 箇条書きリスト
  • フローチャート

まとめ

AutoForm手法を使用することで、LLMは構造化データを表現するためにJSONを選択し、フィルタリングにはPythonコードを選択しました。この組み合わせにより、問題を効率的に解決し、結果を明確に伝えることができました。このアプローチは、「AutoForm」がより複雑なタスクにおいても推論プロセスとコミュニケーション効率を向上させる方法を示しています。

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